Qactus-カクタスの寿命
公式サイトから毎日発信されているメッセージの中に、
#Qactus は8割といわれるギター挫折者を正常な状態へと移行させるためのものであり、長年依存すべきものではないため、敢えて耐久性を積極的には高めておりません(※もちろん目的に充分な耐久性を備えています)。Qactus卒業の地点へ全員を見送ることも重要な仕事です。http://qactus.jp/jp/qactus/index.php#graduation
という内容のツイートがあります。
これ、つまりメーカーが公にSNSで「自社の商品は、使用目的に対して必要充分な強度をきちんと確保しましたが、敢えてそれ以上積極的に耐久性を高める研究はせずにおきました」と言っているのです。
そんな情報をわざわざ公言したがる組織はウチぐらいではないかなと思いますが、いかがでしょう。
しかしながら「耐久性を高めることを積極的にしていない」というだけで、Qactusは実際、誰もが想像する以上に長持ちしますし、通常使用であればどう考えても充分過ぎるといえるものになっています。
QactusCoreを毎日作り続けているUNOさんという投稿者がいます。この開発者blogを書いている時点で既に一年近く、誰よりも激しく毎日毎日Qactusを使い続けているので、「摩耗して使えなくなりました」という連絡がいつ入るのかなと様子をうかがっているのですが、現状まったく大丈夫です。
企業努力として耐久性を高めることに向き合うのは当たり前でしょうし、しなかったとしてもわざわざ公言しないのが常識でしょうけども、Qactusは違います。
「ギター挫折者をゼロにするために必要なツール」としての最高を目指した結果、現行のQactusが完成しましたが、そこから先の「10年耐えられる製品にするための検証」みたいなことには積極的に取り組む必要なしと判断しました。
Qactusがポリカーボネートでなければならない理由
Qactusはプラスチック製です。プラスチックといってもいろいろあります。Qactusはポリカーボネートという素材を厳選し、本体に使用しています。
これはいろんな素材をそれぞれ試奏した結果で、最も抜けの良い明るい音色の得られるポリカーボネートがビギナーの練習ムードを高めるのに最も適しているとの結論です。
ですが、例えばもし仮に「更に耐久性を高めることを検討しましょう」という声が開発過程でどこかの部署から上がったとしたら、一体どんなことになっていたんでしょうね。
もしもQactusが耐久性ベースで開発されていたら
仮に金属のようなものでシュミレーションしましょうか。
まず、金属弦に金属(=Qactus)が接触し、振動を繰り返するとなるとどちらも摩耗しますよね。弦は細いので摩耗した際のダメージはQactusよりも大きいでしょう。
Qactusのせいで弦がブチブチと練習中にたびたび切れてしまうのは困りますね。
それに金属なので素材単価がだいぶ跳ね上がるのと、加工も金属向けに跳ね上がるのとで、価格も上がれば弦や指板を傷つけるリスクも上がり、おまけに音色が犠牲になってビギナーの練習ムードにも影響し…と、耐久性を高めたことでのメリットが見当たらない訳です。
「ギター挫折者をゼロにするために必要なツール」としての最高を目指し追求した結果がポリカーボネート材ということですが、そこから更に耐久性を追求し始めた途端、最高の「ギター挫折者をゼロにするために必要なツール」としてのあれこれを犠牲にしながら別の選択肢を探るような本末転倒が起こる訳です。
ン十万円のバッグを買ってもストラップ部分は柔らかく摩耗するし、ン百万円の新車を買ってもワイパーやタイヤは摩耗するし、ン千万の家を買っても和室の畳は摩耗するし…。
でも当然、ストラップが金属だと肩がアザだらけになるだろうし、ワイパーやタイヤが金属だったら視界は傷だらけだしブレーキは効かないし乗り心地悪いし、和室が金属だったら…。
Qactusはこれまで世になかったものなので、ひょっとしたらこれを「楽器」だと思わない人がいるかも知れませんが、音色、音程、アタック、余韻などに深く関わる以上、やはり楽器なのです。
通常使用に充分な耐久性あるいはそれ以上の品質をクリアするのは当然のことであり、使用者が「Qactusは摩耗とは無縁だ」と実感できるレベルにあります。
それを前提としたお話ですが、ストラップやワイパーやタイヤや畳と同様、最高の機能性を犠牲にしてまで耐久性ベースで素材を選んではいけないものがあるということをユーザーには踏まえていただく必要があります。
Qactusにとっての「摩耗」
だいぶ丁寧な説明で長くなりましたが、いよいよ本題の『Qactus(カクタス)の寿命』、言い換えるならばQactusにとっての「摩耗」について最後にちょっとだけ話をします。
Qactusが目指すべきは「ギター挫折者をゼロにする器具としての最高」であり、「ギター挫折者に末永く依存していただける器具としての最高」ではありません。
ビギナーにとって必要な最低限の演奏スキルを習得し、Qactusをなるべく早く、確実に卒業させること。
これが「ギター挫折者をゼロにする器具としての最高」であります。
言うほど摩耗のないQactusなのでわざわざネガティブに過剰演出したりそれを公に発信しなくてもよいのですが、むしろこの自虐的なメッセージが「いつか摩耗して使えなくなる可能性があるのなら毎回しっかりやらなくちゃ」と思わせる要素と成り得るのならば、むしろ積極的にアピールしたいと思った次第です。
この身を削り、誤解のリスクを負ってでも「ギター挫折者をゼロに」にこだわり、どこまでも徹底的にブレない、これがQactusのスタンスであります。
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