ギター経験者から「オープンチューニングと同じ理屈?」の質問がなぜ多いか
- 2018.02.18
- Qactus-カクタス
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経験者による「Qactus-カクタスはオープンチューニングと同じ理屈なんですよね?」という質問
「要するにQactusはオープンチューニングと同じ理屈なんですよね?」
…このような質問をギター経験者の皆さんから度々いただきます。
頭の中の引き出しのどれかに収めようとするのが人間の脳のマズいところでもあり、優れたところでもあるのですが、ある程度の経験と知識があると、新しい価値観をインプットする際にそれらが邪魔をし、逆に何の経験や知識のない人よりも理解できないといったことが、音楽に限らず多々あります。
そんな訳で今回は、ギター経験者に向けた内容に限定し、書き進めていきます。
ビギナーには少々分かりづらい部分もあるかもしれませんが、ご容赦ください。
ありがちな先入観
当初からたびたび言及している通り、Qactusはこれまでに世にあるべきだったのに実際にはなかったものであり、誰の頭の中にもそれを収納する引き出しはありません。
こんな小さなプラスチック成形製品にちょっとした吸収材がくっ付いているだけのものなのでナメてかかられるのは仕方ないのですが、少なくとも多くの皆さんの想像は間違いなく越えているので、注意深く分析していただけたらと思います。
Qactusは、およそ15年、述べ200回の定期音楽合宿、そして単発の講義やワークショップ等も含め、初期段階の壁を越えられないビギナーの傾向と有効な対策を元に、「ギター挫折者をゼロに」するため徹底的にアイデアを煮詰めた珠玉のギター教材です。
何となく「巻弦サイドの音程が全音上がり、オープンチューニングみたいな状態になるからコードフォームが簡単になるんだろうな」と、ある程度のギター経験者なら大抵そうイメージします。
だから「要するにオープンチューニングと同じ理屈なんですよね?」という質問に至り、開発者が「いえ、実はそうではなく…」と説明しなくてはならない訳です。
もしも当初「ギター挫折者をゼロにする」目的をオープンチューニングで果たすことが出来ると考えたなら、私はわざわざ膨大な資金と時間と労力を費やしてQactusを作ることなどしませんでした。
メーカーみたいなものをやりたくてQactusを作った訳ではなく「楽器に挫折した人を減らして楽器人口を増やしたい」だけなので、オープンチューニングが有効ならばありがたくそれで済ませていた訳です。
オープンチューニングでギタービギナーは救えない
では、なぜQactusのように押弦側の指づかいをシンプルに変えられる「オープンチューニング」という選択をしなかったのか?
開発者はQactus完成までに15年、数千人の楽器挫折者と現場で向き合ってきましたが、初期段階の壁を越えられないビギナーは普通のチューニングでさえ四苦八苦しながら結構な時間をかけてようやく練習が始められる状態にたどり着きます。
そんな彼らに「DADGAD」だの「DADF#AD」だの「DGCDGC」だの「DADEAD」だのといった変則チューニングのためにペグをひねらせることをやらせたらどうなるか…想像に易いですよね。
更に、オープンチューニングは指板上の秩序がレギュラーチューニングの状態から大きく崩壊するため、プロでも混乱します。
Qactusの目的は「ギター挫折者をゼロにする」ことです。
つまり、挫折を乗り越えさせ、通常のギタープレイができるような状態まで導く、ということです。
指板上の秩序が崩壊した状態のギターを抱え、通常のフォームとはかけ離れたポジションが散らばったコードを押さえ、それでオープンチューニングを卒業した時、彼らは果たしてギターが普通に弾ける人として完成されているでしょうか?
こういった事情を踏まえると、ビギナーを次のステップへ送り届けるにはどうしてもレギュラーチューニングでブレイクスルーしなくてはなりません。
しかも通常のコードフォームとは全然違うポジションになってしまうと、ビギナーは次のステップに移行した際、また一から各コードを覚え直さなければならない訳ですから、当然それも挫折者を生む大きな要因になり得ます。
ギターに限らず重要なのは、各成長過程に的確に寄り添うこと
Qactusの場合、通常のコードフォームのうちの1~2本の指のみを残す、ということが可能です。
つまり、指ポジションがいずれ増える際もフォームを覚え直すのではなく、覚えたポジションに対して追加していけばよいので、ビギナーは指1本から少しずつ慣れていきつつ、自分のペースで徐々にその指ポジションを増やしていくことができる訳です。
ここまで計算されたものであることは残念ながら今のところ誰ひとり言い当てておらず、十中八九「要するにオープンチューニングと同じ理屈なんですよね?」となってしまうのです。
我々経験者たちが新しい有用なものを見逃すのは世の中のためにもあまり生産的ではないし、これから皆さんの後を追って来る無数のビギナーたちのためにも、やっぱり我々経験者こそ、いつも頭の中を柔らかくしておきたいですよね。
十数年の歳月をかけて数千人の楽器挫折者と挫折についての傾向を研究分析してきたなどというおかしなキャリアのある人はそういないでしょうし、誰の頭の中にもまだその引き出しがなくて当たり前。
あれこれ言いながらも、開発者もギター経験者の諸事情はよく理解しているつもりです。こればっかりは仕方がないと考えています。
ギター経験者の言動がビギナーたちの未来を左右する
しかしながら「仕方がない」では済まされない事例もあります。
中には理解しようともせずに「オープンチューニングにすればそんなもん買わなくたって済むじゃねーか」といった心ないことをネット上で発信し、それがなまじギター経験者の発言であるせいで、何も知らないビギナーたちが「そうなのか…経験者がそう言うんだから、じゃ、そうなのね」…といった残念な話もあるようです。
Qactusに備えられた機能が見た目よりもずっと多い事情で、ギター経験者でさえパッと理解できないものになってしまっていて、作って世に出してみたものの、一体これだけの情報をどう的確に細部にまで伝えたら良いのかといった苦悩が開発者には常にあります。
この開発者ブログがその少しでもの助けになればと、引き続きあれこれ綴っていきますので、ギター経験者の皆さん、ぜひ根気強くついてきてください。
我々の後を追って来る無数のビギナーたちの未来のため、音楽文化の活性のため、そして皆さんご自身のためにも。
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