カクタスを「エレキギター用」にチューンナップする方法(※非公認)

カクタスを「エレキギター用」にチューンナップする方法(※非公認)

エレキギターとアコースティックギター

 
Qactusはアコースティックギター専用です。

ただし、無茶をすれば(楽器の状態によりますが)エレキギターでも使用できます
関連記述があるのでご覧ください。

Voice of the developer -Qactus開発者サイドの声-
『Qactus-カクタスはエレキギターでも使える?』
http://qactus.jp/blog/archives/258

 

記述の通り、様々な理由で、厳密にはアコースティックギターで挫折するビギナーを救うことに目的を絞り、開発されているQactusですが、エレキギターでも使いたいという声は常にあちこちから聞こえてきます。

上記リンク先の記述にもある通り、エレキギターは必ずしも開放弦を多用しない楽器であるため、「挫折」の意味合いがアコースティックギターとは違います。

弦のテンション(=硬さ)もアコースティックギターよりは相当甘いので弦も押さえやすく、運指にもそれほどのストレスはかからないといった特徴から、エレキギター派のビギナーは何とか自力で壁を越えられるであろうといった判断での、「Qactusはアコースティックギター専用」といった経緯でした。
 
 
 

エレキギター派も挫折する

 
しかしながらエレキ派のビギナーからの問い合わせが途切れぬ状況から、アコースティックギター派を救うだけでは不充分であるという思いも、正直なところ、若干あります。

いずれにせよそのような現実がある以上、Qactusは何かしらの打開策を打ち出したいと考えましたが、そもそも私自身がメーカーとして本格的にビジネスを展開する身分ではないのに加え、メーカーとしてのキャリアを持ったその道のプロの方々から見たら私なんぞは赤子のような未熟者であるため、現行Qactusに更なるエレキギターモデルを追加して展開しようなどといった発想はない訳です。

身勝手な言い分に聞こえるかも知れませんが、Qactusを世に出した経緯は「音楽人口を増やす」という目的の一端であって、そこはブレてはならない基礎軸であると考えております。

ただただ、放っておいたら挫けてしまうビギナーを救いたいという思いのみです。

【関連リンク】
演奏体験が地域を、社会を、世界を、明るく元気にする
Q-saiが“music lovers (=音楽が好きでたまらない人たち)”を増やす活動に取り組む理由
http://q-sai.net/about/vision/

「演奏体験が地域を、社会を、世界を、明るく元気にする」Q-saiが“music lovers (=音楽が好きでたまらない人たち)”を増やす活動に取り組む理由

…といった経緯から、Qactusのエレキギターモデルを発売することは恐らくありませんが、ここからは私個人の発信情報として、エレキギター用のQactusを必要としているビギナーのために、非公認情報として書いていきます。
 
 
 

オペの前に、大切な忠告

 
Qactusをチューンナップし、エレキギターで使用できるようにする方法を伝授します。
 
…と、その前に、重要な意識共有が必要なので、しっかりと読んでくださいQactusをチューンナップすべきビギナーは、以下のいずれかの該当者のみ

Qactusをチューンナップすべきビギナー

  • いまの住環境ではアコースティックギターのような音量はとても鳴らせないため、泣く泣くエレキギター(アンプ不使用)で練習している
  • 生音での練習用と割り切るため、Qactus装着状態では決してギターアンプは鳴らさない
  • 完全にエレキギター派だが、コード運指がうまくできずに困っている
  • エレキギターとアコースティックギターの違いさえ分からず、とりあえずエレキギターで練習している
  • エレキギターで弾き語りがしたい
  • なんにも弾けず、持っているエレキギターが可哀想なので、なんとかしたい

 

Qactusのエレキ使用をお勧めしない方

更に念のためですが、以下に該当する人は、Qactusをエレキギターで使用するのを決してお勧めしません

  • たぶん一生、ギターは「ディストーションサウンドのエレキギター」しか弾かない(=エレキギター特有の奏法しか行なわない)
  • 華やかなギターソロ以外に興味がない
  • Qactusを卒業したら中古品として転売するつもりなので、Qactus本体を傷つけたくない
  • 現在アコースティックギターでQactusを使用していて、今後も引き続き使用する
  • Qactusを装着したエレキギターを「ギターアンプで鳴らす」予定がある
  • あまりにも不器用なので工具などは使うな、と親に釘を刺されている
  • 小学生以下のお子様
  • 妊娠中の方
  • 泥酔している方
  • その他、ちょっとしたDIY加工に自信のない方(※とはいえ、Qactusのチューンナップは非常に簡単です)
  • お持ちのエレキギターがそもそも悪い状態で、とくにネックが反っていてストレートな状態を保っていない場合(※この場合、Qactus云々以前に通常使用に差し支えるので、楽器店に持参してリペアの相談をするなど何らかの対処が必要)

 

Qactus加工後に起こり得る不具合

また、ご覧の通り、これはQactus開発者である私きりばやしひろき発信の情報であり、どこからどう見ても公式のQactus開発者Blogへの投稿ではありますが、この加工方法は「非公式情報」であるということを踏まえつつ、加工によるメリットだけでなく、加工後に起こり得るであろう不都合をも予め正しく知っておいていただかなければなりません

  • 3〜5弦の計3本のための浅い弦溝をQactus本体に掘るため、Qactusの脱着作業がスムーズではなくなる(Qactusと弦を傷つけぬよう、弦を一本一本持ち上げながらその都度丁寧にケアする必要あり
  • 以降、アコースティックギターでは使えなくなる(溝の具合によっては使用できる可能性もあるが)
  • ギターアンプで鳴らすと、きちんとした音色が出ない(Qactusのエレキギターでの使用は「生音で練習するのみ」の用途に限る)
  • 加工中あるいは加工後、掘った溝の状態によっては怪我をする可能性はゼロではない(よほどないとは思いますが、念のため)
  • いつかQactusを卒業したら中古品として転売しようと考えている場合、加工によって価値が下がる(というより、売り物にはならないと思います)
  • 出荷時の不良品など、メーカーがカバーすべき保証は一切受けられなくなる
  • 見た目が若干変わる
  • 万に一の失敗もある(手順通りにきちんと行なえば、まず大丈夫な筈ですが)

 

以上、一人でも多くのビギナーを救いたいという思いで、製品の品質や保証の範囲を逸脱する「改造」であるということを踏まえ、加工後は如何なる保証やクレームも受け付けられませんので、加工するか否かはくれぐれも慎重に判断してください

本投稿の内容すべてに目を通し、きちんと確認した上で、それでも加工したいという人のみ、先に進みます。
 
 
 

最終確認

 
徹底的に念を押します。

このチューンナップ方法は、Qactus開発者である私が、「エレキギターでQactusを使いたい」と熱望するビギナーを救いたいというその想いのみで、個人的にその方法を開示するものであります。

本来、メーカーなら「絶対に加工しないでください」と釘を刺すのでしょうが、私はいわゆる普通のメーカーではなく、楽器人口・音楽人口を増やす活動に取り組んでいるミュージシャンなので、そのために良いと思ったら、自社製品にも手を加えなさいと躊躇なく言ってしまいます。

ですので、ここでの改造に関するアドバイスはすべて、個人の責任で行なってください
加工による破損、怪我、その他、当方は一切の責任を負いませんので、ご了承ください。
 

くどいようですが最後にもう一度だけ確認します。
 

Qactusをチューンナップすると、元の状態には戻りません

また、万が一その加工に失敗したら、Qactusは使い物にならなくなる可能性もあります。

「それでもOK、どうしてもエレキギターで使いたい!」というビギナーのみ、事項へ進みましょう。
 
 
 

いざ、手術開始

 
では、いよいよQactusを加工していきます。

最後の最後にもう一度だけ念を押しますが、ここから先に進むと、Qactusは元の状態には戻りません

また、工具での加工なので、怪我などの可能性もあります。(よほど危険な作業はないですが)

充分注意し、すべて自己の責任で行なってくださいね。
 

ホームセンターなどで売っている「目立てヤスリ」を用意します。

と言ってもいろいろあるので、どれを選べばよいか分からない人のために、一例としてこのような商品リンクを紹介しておきます。


『SUN UP スリ込ヤスリ 75mm』
https://www.amazon.co.jp/dp/B00N3TZ6N6/
※Amazonサイト内へのリンクです

 

本投稿は、実際にこの商品(目立てヤスリ)を使って解説していきます。

“ギターの弦の溝を切るためのヤスリ1"

ギターの弦の溝を切るためのヤスリ2
 
 
 

ヤスリを当てる位置を決める

 
まず、Qactusをエレキギターの2フレットに装着します。

この際、Qactusが確実に奥まで差し込まれているか(=Qactusの黒いゴム製ミュート材が6弦に充分に当たっているか)をしっかりと確認しておいてください。

▼Qactusを装着した状態
“ギターにカクタスを装着した状態"

 
アコースティックギターに装着した時よりもだいぶ弦の高さが上がったなぁと感じるはず。

この状態でも使用できますが、よりエレキギター向けに改造するための本投稿なので、先へ進みます。
 

写真のように、鉛筆で5弦の横(4弦側)に印を付けます

“ギターにQactusを装着した状態"

この印が少しでもズレると後々不都合が起きるので弦に圧力をかけず(弦を鉛筆で押すことなく)、且つ、弦のすぐ横に隙間なく印を付ける」という意識で丁寧に行ないます。
 

これがうまくできたら、同じように4弦と3弦にも印を付けます。

結果、3カ所の印がQactusに付いた状態となりますね。

▼3ヶ所の印が付いた状態
“Qactus、カクタス"

 
 
 

溝を切る

 
さあ、いよいよヤスリを使ってQactusに溝を切っていきます

念のためですが、ここからの行程は「Qactusをギターに装着した状態」ではなく、必ず「Qactusをギターから外した状態」で行なってください。
 
 
溝を切る」というのは、つまり「弦を乗せる溝を掘る」ということです。

ヤスリを使ってQactus本体に溝を掘る訳なので、当然、失敗したら取り返しはつきません
 
 
とは言ってもQactusは何万円もする代物ではないので、最悪の場合は新しいのをひとつ買えばよいでしょう。

もちろん失敗せずにやることを目指しますが、万が一の失敗のために、その程度の覚悟は必要かなと思います。
 
 
挫折せずにギターを続けていける大きな可能性を考えたら、微々たるリスクです。

ひとまず「最悪は買い直す、しかし絶対失敗はしない!」といった程度の覚悟を決め、いざ溝を切っていきましょう。
 

写真のように、ヤスリを垂直に立て、Qactusに当てていきます

ギターからQactusを外し、溝を切る

ギターからQactusを外し、溝を切る

 

この際、注意すべき点が3つあります。

  1. ヤスリの向き
  2. ヤスリを当てる位置
  3. ヤスリの幅

この3点が定まるまでは絶対に削り始めないこと
 

まず「1. ヤスリの向き」ですが、つまり後々そこに弦が乗ることを明確にイメージし、まっすぐに弦が乗せられるよう、つまり溝が弦に対して斜めになったりして余計な負荷がかからぬよう、「弦の向きと平行の溝」になるよう、溝を切っていきます

次に「2. ヤスリを当てる位置」ですが、先ほど鉛筆で付けた印のすぐ隣、仮に5弦ならば「印のすぐ隣(6弦側)」にヤスリを当てるということです。が、「すぐ隣」の感覚に個人差が生じる可能性が大きいので、最終的には少しだけ印の部分も削れ落ちるぐらい近いところを削っていくという感覚で行なってください。

この「個人差」を補うという意味では、最後の「3. ヤスリの幅」というのはとても重要で、「目立てヤスリの幅」と「これから削っていく溝との幅」を予め確認しておくことが大事。
 

ちなみにこの3本の弦のうち、5弦が最も太く、3弦が最も細いということは誰でも何となく気付いていることと思います。それを踏まえ、溝を切る前と後とではどう変わるのか、予めイメージしておいてください。

“ギター断面図、弦とQactusとのイメージ"

こんなふうに「5弦、4弦、3弦」それぞれの溝の大きさ(=幅、深さ)も変化するということを知ってください。

同時に、この図の「溝を切った後」のイメージを目標に、微調整していくことも想定しておきましょう。
 

更に、これらの溝の大きさの差異を利用すると、失敗のリスクを減らすことができるんです。

大切なQactusに、初めて手にしたヤスリを当てていくということは、ミリ単位以下での失敗もあり得ます、人間なので。
 

という訳で、最初に削っていくべき溝は、最も太い「5弦」の溝がよいと考えられます。

なぜなら、狙った位置から少々ズレたとしても、5弦用の溝にはある程度の幅があるので、多少の修正が利きます

これでコツを掴んでから、4弦、3弦の順で溝を切っていくと、失敗のリスクは最小限に抑えられる筈です。

▼ギターの弦を乗せる溝を切った状態のQactus
“ギターの弦を乗せる溝を切った状態のQactus"

 
 
 

弦を乗せてみる

 
3つの溝を切ることができたら、一旦Qactusをエレキギターに装着し、具合を確認してみることにしましょう。

その前に、本投稿の最初のほうで確認した【加工後に起こり得る不都合】の冒頭、

  • 3〜5弦の計3本のための浅い弦溝をQactusに掘るため、Qactusの脱着作業がスムーズではなくなる(Qactusと弦を傷つけぬよう、弦を一本一本持ち上げながらその都度丁寧にケアする必要あり)

の部分を思い出してください。
 

通常ならばワンタッチで装着できるQactusですが、溝を切ったQactusは「Qactusと弦を傷つけぬよう、弦を一本一本持ち上げながらその都度丁寧にケアする必要あり」の状態となります。

焦らず、丁寧に弦とQactusをケアしながら脱着作業をしてください。

▼溝に弦が乗った状態で装着したQactus
“ギターに装着したQactus、溝に弦が乗った写真"

これで実際にQactusのコード(指1〜2本程度のフォーム)で試奏してみると、溝を切る前よりも音程が安定し、弾きやすくなっていることに気付くでしょう。
 

理想的な溝の深さはギターの状態によって様々ですが、基本的には先ほどの図で示したイメージの通り、弦の半分ぐらいがQactusに埋まる感じを目安にするとよいでしょう。

“ギターの弦に沿った、Qactusの溝の状態"
 

あまり深く掘りすぎると、溝を切った部分の開放弦が不安定になるので、微調整の際は少しずつ削るようにしましょう。

ギターの弦に沿った、Qactusの溝の状態
 

ちなみに工具の扱いに慣れているという人は、巻弦(4弦と5弦)を丸ヤスリで仕上げるといった行程にもチャレンジしてみてください。

何のことかさっぱり分からないという人は丸ヤスリのことは無視してOK。
 
 
 

まとめ

 
以上が、Qactusを「エレキギター用」にチューンナップする方法でした。
 

本投稿を読んでみて「どうしても自分で加工するのは無理」という人は、Qactus関連のイベント等に「練習で使用するエレキギターとQactus」を持参していただければ、私が個人的にその場で施します。(※このメールフォームから必ず事前にご一報ください)

イベント情報はQ-sai@楽器挫折者救済合宿の公式サイトか、Qactusのワークショップページに随時アップされるはずなので、チェックしてみてください。

あるいは、可能ならばQactusの公式Twitterフォローしていただくのが確実です。


 
エレキギターとアコースティックギターのユーザー比率は、世界の国々とは違い、我が国はエレキギター派が過半数と言われています。

Qactusは基本的にアコースティックギター向けに設計されたものですが、今回の非公認チューンナップによって、とくにギターをはじめたばかりの初期段階では結局どちらにも助けになるものとなり得ます。
 

Qactusとエレキギターで、ギターの初期段階をクリアしたい」というビギナーにのみ、本投稿を参考にしていただきたいと思って書きました。
 

本投稿の最初のほうでも釘を刺しておきましたが、Qactusでの練習の際は決してアンプに繋がず、必ず生音で行なってくださいね。

早くアンプで鳴らしたいというせっかちなビギナーの皆さん、とにかく早くQactusを卒業しましょう。

すべてのギター挫折者や楽器未経験者の皆さんにQactusを有効活用していただけたら幸いです。